正解がないからこそ、 論理の一貫性が重要

刑法I 本庄 武教授

 私が担当する刑法Ⅰでは、さまざまな犯罪に共通して問題になる一般的な犯罪の成立要件を体系的に学び、学生と議論していきます。そして刑法の理論を使って具体的な問題を解決する、そんな力を身につけてもらうことが大きな目標です。そこで学生には課題として、ある事例について「刑法的にどう評価するか?」についてのレポートを作成してもらっています。実は、この課題には正解や模範解答がありません。重視しているのは、結論に至る過程の論理的一貫性です。そもそも社会の病理である犯罪について法的にどう評価するかは、本質の部分でいまだに評価が分かれ、議論が続いている問題です。ですから、ある出来事に対して「それは有罪である」と判断するには、説得力のある理由が必要です。犯罪とは何か、なぜ人は罪を犯すのか。刑法というツールを使い、哲学・倫理などの根本的かつ多面的な視点も取り入れながら論理を展開し、結論を導き出す。刑法を学ぶことで論理的思考力を鍛えることができますし、ここで鍛えられた能力は、どのような分野に進んでも通用するほど汎用性が高いと考えています。 (談)

 

 

HQ vol.37より転載