ご挨拶

一橋大学大学院法学研究科長
屋敷二郎

  一橋大学大学院法学研究科は、リベラルな学風のもとで大学院生のみなさんの自主性を最大限に尊重しつつ、先端的・学際的な研究を遂行できる研究者や、高度な知識・能力を備えた専門的な職業人、とりわけビジネス法務に精通し、国際感覚・人権感覚に富んだ人材や、国内外の紛争の予防・解決に適切に対処できる人材の養成に日々取り組んでいます。

  研究者を目指す人であれ、専門的職業人を目指す人であれ、大学院において学ぶべきこと、知るべきことは途方もなく多く、みなさんの前に立ちはだかっています。これを乗り越えてその先へと進むには、強く折れない心、諦めない心が必要です。他方、新型コロナウイルスの蔓延やウクライナをめぐる国際情勢のように、努力しても、頑張っても、自分にはどうしようもない事態というものは、予期せず訪れるものです。そのような場合には、当初の計画にこだわらずに、現在の状況下でもできることは何かと考え、所与の条件のもとで許されるかぎりでの成果がえられれば良しとする柔軟さ、そのような変化を前向きな気持ちで受け入れる勇気もまた大切さです。

  本学附属図書館の大閲覧室には、商法講習所の創設と発展に尽力した渋沢栄一の胸像が飾られています。この胸像の渋沢は、学問にいそしむ本学の学生たちを見守るかのように微笑んでいます(笑顔の渋沢の像というのは珍しいそうです)。私は、大学院生のみなさんには、笑顔を絶やさず、常に愉しむ気持ちをもって学問に向き合ってほしいと願っています。なぜみなさんは大学院で学びたいと思ったのでしょう。息をする、食事をする、日銭を稼ぐ、といった意味において、学問が「必要」であることは決してありません。学問が食事と同等以上に必要だなどと主張する人がいたら、その人は嘘つきです。学問は、それを遂行する人自身の「知りたい」という気持ちに突き動かされて行われるものです。学問の原動力は、それを遂行する人の欲求です。だから、いつも笑顔でいましょう。学問を愉しみましょう。そして、いま自分が学問できることの幸せに感謝していましょう。

 法学研究科長として、私は大学院生のみなさんが学問を愉しめるような環境整備を何よりも大切な使命だと考えています。強靭で、しなやかで、そして愉しげな学問仲間の訪れを私たちは心待ちにしています。

 

 

一橋大学大学院法学研究科長
屋敷 二郎