法学部長からの挨拶
一橋大学法学部は、法学・国際関係学を専門とする学部であり、一橋大学のリベラルな学風の下で学修に関する学生の自主性を最大限に尊重しつつ、豊かな人権感覚と社会的公共性に裏打ちされた法学の専門的素養と国際的洞察力を育み、自由と平和の拡大に貢献できる多様な人材を育成しております。
法学・国際関係学にとって、自由と平和の追求は永遠の課題です。人々が対等な関係で共生あるいは共存しようとするならば、最低限、お互いに傷つけない、お互いに強制しないといった各人の自由を相互に尊重するルールが必要なはずです。国際社会で国家が併存している状況でも、お互いに侵略を行わないことは、平和を実現するための最低限の条件でしょう。実力による現状変更を否定し、法や裁判によってのみ強制が行われる状況を実現することで、各人の自由を守り、平和を実現しようとする考え方は、法学・国際関係の基本原則となるルールです。このようなルールは、空気のように当たり前のことように感じられるかも知れませんが、ロシアによるウクライナの軍事侵攻の例等からも明らかなとおり、時に容易に崩れ去る脆弱なものです。また、グローバル化が進み、様々なレベルで人間の活動が他者との複雑かつ緊密な関係を前提とする現代社会において、これらの基本原則だけで単純に自由や平和が実現されるわけではありません。だからこそ、日々、人間社会は自由と平和を実現するルールについて、学問的に問い続けることが必要となります。
一橋大学法学部においても、現代社会における自由と平和に貢献する教育研究が行われており、学生が法学・国際関係学を学び、自らを成長させることができる環境が整っています。実務法曹になりたいのであれば法科大学院への進学を見据えた法曹コース、法学の素養を身につけて官公庁や企業等で活躍したいのであれば法学コース、国際関係学の知見を活かして外交官や国際機関の職員等として世界に羽ばたきたいのであれば国際関係コースと、多様なコースを設置しています。法曹コースは、その特性上必修科目が多いものの、法学コースと国際関係コースでは、学生の希望に応じた自由な履修科目決定が可能です。また、一橋大学は他学部との垣根が低いという特徴があり、他学部で開講されている科目の履修によって学際的に学ぶことができます。さらに、グローバルに活躍できる人材の育成を目的としたグローバル・リーダーズ・プログラムや、修士課程で国際関係論又は国際関係史を専攻する学生を対象に5年間で学士号と修士号を取得できる学部・大学院5年一貫プログラム、法学部での学修に加えて経済学部の専門科目を体系的に学べる経済学副専攻プログラムといった多彩な教育プログラムも提供しています。これらの他、英語による授業や海外大学との合同ゼミ、海外留学の機会も提供されます。
一橋大学法学部では、法学・国際関係学を様々な角度から学ぶ機会が提供されており、学生が主体的に履修科目等を決定して法学の専門的素養と国際的洞察力を養い、自らの成長を実現することができる環境が整っています。一橋大学法学部で現在学んでいる皆さんには、この環境を存分に活かして、自らの成長を実現し、自由と平和の拡大に貢献すべく、社会に羽ばたかれることを期待しております。また、このような環境を活かして自らを成長させ、自由と平和の拡大に貢献したいと考えて、一橋大学法学部の門戸を叩かれる方が一層増えることを、切に希望しております。
一橋大学法学部長
竹下 啓介