ご挨拶

一橋大学法学部長
屋敷二郎

  一橋大学法学部は、リベラルな学風のもとで学修に関する学生の自主性を最大限に尊重しつつ、豊かな人権感覚と社会的公共性に裏打ちされた法学の専門的素養と国際的洞察力を育み、自由と平和の拡大に貢献できる多様な人材を育成したいと考えています。

 法学を志す学生には法学コースと法曹コースが、国際関係学を志す学生には国際関係コースが用意されています。法学コースは法的な素養を身に付けて官公庁や企業で活躍したい人、法曹コースは法科大学院に進学し法曹を志す人、国際関係コースは外交官や国際的活動をする機関・企業などに進みたい人を対象としています。科目履修においては、他コース・他学部の垣根を超えた履修が可能であり、自分の関心に応じて自由に学びながら幅広い視野を身につけられることも、一橋大学法学部の特徴です。 

 他にも、英語による授業や海外大学との合同ゼミ、海外留学を組み合わせ、グローバルに活躍できる人材の育成を目的としたグローバル・リーダーズ・プログラム、修士課程で国際関係論又は国際関係史を専攻する学生を対象に5年間で学士号と修士号を取得できる学部・大学院5年一貫プログラム、法学部での学修に加えて経済学部の専門科目を体系的に学べる経済学副専攻プログラム、といった多様な教育プログラムも提供しています。 

 中世イタリアのボローニャで大学が誕生したとき、学問への憧れだけがありました。そこにはキャンパスも、建物も、学則も、学位すら存在しませんでした。6世紀の皇帝ユスティニアヌスが編纂を命じた学説彙纂の写本が再発見され、これをイルネリウスが研究し始めたところ、興味をもった若者たちが集まり、その教えを乞い、家に上がり込み、住み込んでしまいました。イルネリウスと弟子たちは、何のためでもなく、ただ「知りたい」という気持ちに突き動かされて学問を続けました。やがて家に入りきれなくなった弟子たちのために教室が生まれ、そうした施設や増え続ける学生・教員を管理するために学則が定められ、高まる名声に目を付けた聖俗の権力者から学位授与権その他の特権が付与され、ボローニャ大学は現代につながる大学の出発点となりました。しかし、これらの要素は全て後から付け加わったもので、はじまりにあったのは、学問への憧れだけなのです。 

 法学部長として、私は学生の「知りたい」という気持ちを何よりも大切にしたいと考えています。上に紹介した多様な教育プログラムも、これまで一橋大学法学部が学生の「知りたい」という気持ちに寄り添い、向き合い、悩みながら一つ一つ答えてきた結果として生まれたものです。 

 かつて一橋大学を訪れた経済学者シュンペーターは「大学は建物ではない」という言葉を私たちに贈りました。大学は人です。学問に憧れる学生の気持ちこそが大学です。その気持ちに真摯に答えようとする教員の思いが大学です。学生と教員の創り出す学問を縁の下で支えてくれる職員の努力が大学です。「知りたい」という気持ちにあふれた新しい仲間が一橋大学法学部の門戸を叩いてくれることを、私は心待ちにしています。

 

 

 

一橋大学法学部長
屋敷 二郎