屋敷二郎教授が監修した『法の歴史大図鑑』が出版されました

屋敷二郎教授が監修した『法の歴史大図鑑』が出版されました

 

 

法学研究科の屋敷二郎教授が監修した『法の歴史大図鑑』(ポール・ミッチェル著、湊麻里訳)(ISBN:978-4-309-23156-3)が河出書房新社より出版されました。

 

附属図書館に寄贈されています。

 

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【監修者のことばより】

 

「社会あるところ法あり(Ubi societas, ibi ius)」

 

人類史において、法は常に社会とともにあった。法は、あるときは支配のための道具として、あるときは自己を守る武器として、あるときは揉めごとを避ける手段として、またあるときは進路を示す導きの星として生み出され、人類とともに歩んできた。法は、そのときどきの社会にあるべき姿を示す鑑であり、そのときどきの社会のあり様を映し出す鏡でもあった。法を知ることは、その社会を深く知ることである。法の歴史を学べば、現代世界をその成り立ちから深く理解することができる。さあ、法の歴史をたどる4000年の旅に出発しよう。

 

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【刊行に際しての屋敷教授からのメッセージ】

 やらなければならない仕事のすべてが面白いわけではない。これは職種を問わず多くの人が思っていることだろう。大学教員の場合、その専門的知見をわかりやすく学生に教え、一般の方々に伝えることも、「やらなければならない仕事」の一つである。やらなければならない仕事である以上、こちらの都合だけで進めるわけにはいかないから、時として面倒に感じたり手を抜きたくなったりすることも、ないではない。

 

 河出書房新社から『法の歴史大図鑑』の監修のお話をいただいたとき、私はこれを「やらなければならない仕事」と考えてお引き受けした。当時、私は大学院法学研究科長・法学部長の任期終了間際であったので、管理職を離れ一研究者に戻る際のリハビリになるかもという下心もあった。ただ、担当編集者の渡辺真実子さんから分厚い原著と、途方もない分量の訳稿を渡され、さらに多言語の版がドバイで同時に印刷される都合上、スケジュールが非常にタイトであるとの説明を受け、正直、後悔もした。

 

 翻訳者の湊麻里さんの手になる訳文は、正確さと読みやすさを兼ね備えており、さすがプロの仕事と感心した。ただ、法史学の専門家の眼でみると、テクニカルタームや法学特有の言い回しなどをかみ砕きすぎているきらいがあり、本書で法の歴史に興味を抱いた読者がより専門的な学術書に手をのばしたときに、本書で解説されている内容と学術書で論じられている内容との対応関係がわからなくなる懸念も感じた。そこで、ほどほどにしておけば良いものを、うっかり、両者の懸け橋となるように訳文に手を入れるのが監修者としての責務だ、などと思ったが運の尽き、あらゆるページの隅々まで赤を入れる羽目になった。

 

 しかし、終わってみると、こんなに純粋に楽しい仕事はなかなかない、と思えるほどだった。そもそも、古代メソポタミア法から同性婚・ドーピング・インターネット・同一賃金法など現代社会の諸問題に至るまで、4000年におよぶ法の歴史を1か月ほどの期間で監修者として駆け抜ける経験など、なかなかできるものではない。大学3年生のときに恩師勝田有恒先生の「西洋法制史」を受講し、講義で学ぶすべてが新鮮で面白く、週1回の講義が待ち遠しくてたまらない、あの頃の気持ちがよみがえった気がした。また、本書はどのページも豊富な図版で彩られているが、私のもう一人の恩師である山内進先生が、講義で配布するプリントに必ず図版を入れて受講者の理解を深める工夫をされていたことを、懐かしく思い出した。

 

 敬愛する同僚にして先輩である青木人志教授の言葉を借りると、研究には「ワクワク感」が大事である。少なくとも私は本書をワクワクしながら監修させていただいた。願わくは、このワクワク感が読者諸氏の心にも響かんことを!

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