国際共同研究「AI時代の知的財産法と競争法の日仏比較」のキックオフミーティングを開催しました。(2019年5月16日)
国際共同研究「AI時代の知的財産法と競争法の日仏比較」のキックオフミーティングを開催しました。(2019年5月16日)
一橋大学法学研究科グローバル・ロー研究センターは、2019年5月16日の午前中に、国立キャンパスにおいて、日仏二国間SAKURAプログラムによる国際共同研究のキックオフミーティングを、トゥールーズ・キャピトル大学および大阪大学と共に開催した。同研究のタイトルは「AI時代の知的財産法と競争法の日仏比較」であり、研究期間は2019~2020年度である。
本学からは長塚真琴教授と博士後期課程大学院生の杉崎弘氏(共に国際共同研究メンバー)、中西優美子教授、そして長塚ゼミの大学院生および研究生7名が参加した。大阪大学からは青木大也准教授と吉田悦子特任研究員(共に国際共同研究メンバー)が、ビデオ通話で参加した。
トゥールーズ・キャピトル大学からは、アレクサンドラ・メンドーサ=カミナード教授・副学長とジャック・ラリュー名誉教授と法学博士・修習弁護士のギヨーム・ゲガン氏(いずれも国際共同研究メンバー)、フィリップ・ネリドフ教授・法学部長、そして大学院生2名が参加した。
ミーティングはすべて英語によりおこなわれた。まず博士課程大学院生カミリア・バンタイエッブ氏が“The Augmented Human”につき、次に、ゲガン氏が“Autonomous Cars and Data Issue”につき、フランスおよび欧州の状況を発表した。これら2本は論文化され、2020年2月に発行されるHitotsubashi Journal Law and Politics48号に掲載される予定である。
ミーティング前日には、大阪大学で4本の発表(博士課程大学院生ディオゴ・コスタ=クーニャ氏“Using AI in biotechnologies and connected health”、ゲガン氏“Liability Issues and « Autonomous Cars »”、ラリュー名誉教授“Text and Data Mining vs. Protected Material”、メンドーサ教授“AI and Law: IP Law and Some Normative Aspects”)がおこなわれており、中西教授を除く一橋側参加者は、ビデオ通話によりこれを聴いていた。
そこで、当日の2本の発表の後、前日分を含む全発表に対して、長塚教授から質問やコメントが示された。それをきっかけに様々な論点をめぐって議論が始まり、議論の結果、トゥールーズのメンバーはイノベーション促進のために法規制を緩めることに積極的だが、一橋のメンバーはそれほどでもないことがわかった。また、互いの国の経済状況について、先入観を排して正確に把握する必要があることも判明した。
終盤はフリーディスカッションに近い形となり、大阪のメンバーからもビデオ通話で発言があった。特に、ラリュー名誉教授の求めに応じて、どのような条件の下でなら肉体改造や個人データの売買に応じるかについて、学生を含めたほぼ全員が、それぞれの考えを述べたのが印象的であった。国際共同研究メンバーをはじめとする参加者それぞれの価値観が明かされ、キックオフミーティングにふさわしい時間となった。
ミーティング終了後は、教員と学生・ポスドクに分かれて昼食を共にした。教員テーブルには只野雅人法学研究科長が加わって、両大学における法学教育の状況について、フランス語で情報交換した。法学研究科事務室の協力を得て、ビデオ通話を含むミーティングは円滑におこなわれ、昼食会は温かい雰囲気のうちに終了した。昼食後には、杉崎氏のフランス語ガイドにより、一行は図書館を見学した。
国際共同研究「AI時代の知的財産法と競争法の日仏比較」の次回研究会は12月2日にトゥールーズでおこなわれ、青木准教授、吉田研究員、長塚教授が日本の知的財産法のAI関連論点を発表する予定である。また、杉崎氏は11月よりトゥールーズに短期留学し、次回研究会においてはフランス語の通訳を務めることになっている。
(文責:長塚真琴)