2年間の学生生活を駆け抜けて手にした一生の財産

稲田 博志さん

国際企業戦略研究科経営法務専攻修士課程 2008年 修了
現 法学研究科ビジネスロー専攻

[略歴] 大学を卒業し、2001年に弁護士登録後、法律事務所に所属。2005年、国内信託銀行へ出向。翌年、一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻修士課程に入学し、2008年修了。大学院の仲間との共著を出版。2012年、国内銀行へ転職し現在に至る。2020年、日本組織内弁護士協会(JILA)理事・金融部会長に就任。

組織で働く面白さに目覚め、社会人大学院での学び直しを選択

学者の父を尊敬し、追いつきたいと司法試験を目指しましたが、いざ弁護士として社会に出るや自分の未熟さを痛感し、長い人生においては常に学び続ける姿勢が重要だと肝に命じました。所属する法律事務所から大手信託銀行に出向し、組織で働く面白さに目覚めて企業での仕事に興味を持つと、社会人大学院で経営法務を学び直したいという気持ちが強くなりました。いくつか候補を調べましたが、仕事をしながら通える環境が最も整っていたのが一橋の経営法務専攻(現ビジネスロー専攻)でした。平日夜間の授業、都心のキャンパス、図書館などのインフラも気軽に利用できます。総合的に優れていると判断し、当大学院を選択しました。

多忙でも濃密で充実した学生生活を謳歌

一橋の経営法務の授業は法律と実務のハイブリッド型で行われるのでかなり活力がありました。日中は仕事、夜間は大学院と非常に忙しかったけれど、濃密で充実した時間を過ごしました。学生は皆バックグラウンドが多様で社会人経験も豊かでしたから、お一人おひとり異なる観点からの研究内容を聞くのはひじょうに勉強になりました。先生方とも距離が近く、授業が終わった後も神保町の中華料理店でワイワイにぎやかに延長戦を展開していました。「金融取引の機能」をテーマにした修士論文の執筆は確かに大変でしたが、学友と土日の早朝から千代田キャンパスの図書館で勉強会を開くなど交流を楽しみながら乗り越えたのを覚えています。金メダルを手にしたオリンピック選手が「過酷な練習も楽しかった」と話すのを聞いた時、おこがましくもその気持ちが僅かながらわかった気がしました。

仲間と出版活動を続けることで正の循環サイクルへ

修士論文の執筆では、経営法務の分野においてこれまで蓄積した研究成果を求めつつ、自分なりの新たな見解を示していく手法を学べたと思います。修了後は大学院の仲間に誘われて会社法関連の書籍を共著で継続的に出版するようになりました。自己研鑽を図ることで執筆を通じて正の循環サイクルができたという印象を持っています。私は現在、日本組織内弁護士協会(JILA)という所で理事をしていますが、こちらでも出版に関わりつつ、インハウス弁護士の支援につながる活動をするようになりました。

インハウス弁護士として世界の変化の波をつかむために得た学び

これだけ激しく変化し続ける時代では学び直しが必要になります。常に自分の持つ学びの型、スキルが陳腐化していないか再点検し、ブラッシュアップする。その機会を得られたのが当大学院だと思います。日本では私のようなインハウス弁護士はまだ少数派です。ロールモデルがなく、型を自分で手探りしている状況ですが、一橋ではビジネスとリーガルにおいてインハウス弁護士に必要な基礎や実践を学ぶことができたので、非常に意義深かったと思います。インハウス弁護士を社内に置き、国際競争力を強化して世界で活躍する企業は増えています。そのニーズに応えるべく力を磨いていただければと思います。

利害関係のない素晴らしいネットワークを構築した

日中仕事をして夜間大学で勉強するには強い覚悟が必要で、さぞ大変だろうと思う方もおられるでしょう。実際は同じ環境で多くの優秀な社会人学生とともに学びますので、それが強いモチベーションになります。利害関係がないなかで交友を深められるのは人生最大の財産になります。気がつけば2年間を駆け抜けていたというのが私の実感です。これから一橋に入学される方は非常に良い選択をされたと思います。厳しい冬が終わる頃に必ず暖かい春の兆しが見えてくるはずです。