知識や経験が整理され、かかっていた霧が晴れた

荒井 太郎さん

(現 山形大学人文社会科学部 教授)
国際企業戦略研究科経営法務専攻修士課程 2015年 修了
現 法学研究科ビジネスロー専攻

[略歴] 大学卒業後、1982年から30数年にわたり総合商社・鉄鋼商社に勤務。その間、8年間、私立大学法学部で非常勤講師を務める。2015年一橋大学大学院国際企業戦略研究科経営法務専攻修士課程修了。2016年に大学教員に転じ、現在、山形大学人文社会科学部総合法律コース教授。鉄鋼商社で非常勤監査役も務める。

長年養ってきた企業法務の知識をブラッシュアップするために入学

大学を卒業後、商社に入社し、契約関係や事業投資などを手がけながら法務一筋で働いてきました。その間に大学で非常勤講師として国際取引法の講義を担当して気付いたのは、日々の業務に追われて体系的に知識や実務経験を整理する時間を持てなかったことです。50歳を過ぎて、これまで得てきた企業法務の知識をブラッシュアップしたいと考え、他の社会人大学院と比べて実務的な授業が多く、勤務先からのアクセスが良い一橋の経営法務専攻(現ビジネスロー専攻)に入学しました。大学院で最新の理論などを勉強すると、30年近く実務をやってきたなかでぼんやりしていた部分が整理されて、頭の中は霧が晴れたようになりました。

話題の事件を取り上げてゼミ生皆で白熱した議論を展開

会社法のゼミでは、当時世の中を騒がせていたオリンパス事件やエンロン事件等を取り上げて研究しました。弁護士、企業の監査役、保険会社の方、外国の方などさまざまな立場のゼミ生による議論は白熱して非常に面白かったです。参加した夏季合宿では、会社では知り合えない方たちと公私に渡り、いろいろ話ができて知的好奇心がとても満たされました。また、履修可能だった一橋のMBAコースの経営学の授業も受講したので、著名な経営学の先生に学ぶ機会もあって得ることは多かったです。

理論と実務のキャッチボールで法務業務もレベルアップ

一橋に入学すると企業法務の仕事にとてもプラスになりました。勉強したことを仕事に活かし、仕事で何か疑問が出てくると理論に戻るというように、理論と実務の間でフィードバックの好循環が生まれたのです。例えば、海外で事業投資する際に不可欠なコーポレートガバナンスの問題に、一橋で勉強した会社法が役に立ったと思います。

知識や経験を若い学生に伝えたいと大学教員に転職

私も50歳を過ぎ、今まで自分が経験し、学んだことを若い学生に伝えたいと考えるようになりました。そんな折り、山形大学で国際取引法の教員の募集があり、採用が決まりました。私が卒業した大学では卒業論文がなかったので、一橋で修士論文を書く中で修得した論文の執筆方法は、現在の研究活動にも役に立っています。また日本の法律を考えていく上では、他国との比較法的な検討も重要で、この方法も経営法務専攻で習得して今の大学教員の仕事に役立っています。大学で講義をするのは楽しくてやりがいを感じています。

仕事を終えて登校すると楽しい時間が待っている

一橋の社会人大学院の魅力の一つは、先生方が学生と対等な立場で接してくださることだと思います。学生一人ひとりの経験に関心を持ち、何をしようとしているのか、しっかり聞いてくださる。20代の方だけでなく、30代、40代になって──私は50代でしたが、いろんな経験を積んだ方が入学されると知的好奇心が大いに刺激され、またひとつ違った世界が開けてくると思います。仕事で疲れていても大学院で学ぶと不思議にリフレッシュして帰途につけるのです。確かに2年間の勉強は、時間的には大変です。でも行ったら楽しいことが待っている、そんな社会人のための大学院だと思います。