一橋出身者として「ここしかない!」と直感。入学後さらに拡がる活躍の舞台

波床 有希子さん

法学研究科ビジネスロー専攻修士課程(GBLプログラム)2022年3月修了。

[略歴] 一橋大学法学部卒業、一橋大学法科大学院修了後、2017年に弁護士登録(東京弁護士会)。
都内の法律事務所にて主に企業法務の分野で、訴訟などの紛争案件、不祥事案件、渉外案件、株主総会対応等に従事。2022年3月、一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻修士課程(GBLプログラム)修了。

分の頭で考えて探求する勉強をするために入学

私は弁護士になって2年目に当大学院への進学を決めました。実務上生じる問題は、各法律の趣旨に立ち返りながら自分の頭でしっかりと考え、深掘りをしなければ対応できないことも多く、まだまだ勉強をする必要があると感じたからです。また、これまで主に企業法務を取り扱ってきましたが、国際的な渉外案件も数多くご依頼を頂いており、日本法のみならず、海外の法律についても基本的な理解と知識は必須だと考えていました。そのような折、一橋の法学部のゼミでお世話になった教授から、当大学院に国際的な人材育成を目的とするGBLプログラムが新たに設けられたということを教えて頂きました。もともと一橋の出身である私は、少人数でアットホームな一橋の雰囲気がとても好きでしたので、「学び直しをするなら、ここしかない!」と思ったのです。

失敗を恐れずに発言しながら同級生と共に鍛えられる場

当大学院では、ほとんどの授業でディスカッションを盛んに行います。多種多様なバックグラウンドを持つ同級生の発言を聞くことを通じて、今まで考えたこともなかった問題に気付かされることも多く、アカデミックな異業種交流会のような楽しさがありました。また、GBLプログラムでは、全編英語で授業が行われますが、入学当初の私にとって、英語で発言をすること自体がチャレンジングであり、自分の考えを英語で、即座にかつ正確に伝えられなかったときには、とても落ち込みました。でも、失敗を恐れずに何度も発言していく中で、実務で使える法律英語の力も相当鍛えられました。GBLプログラムは、法的な知識や理解力はもちろんのこと、実務で使える英語力も鍛えることができるコースです。

実務的な問題意識から選んだテーマは“株主の誠実義務”

私が選んだ研究テーマは、「日米独の比較法研究に基づく株主の誠実義務に関する一考察」です。私は株主総会に関する助言やサポート業務も行っていますが、近年は、株主民主主義がクローズアップされており、どこまで対応すべきか、苦心されている企業が多いと感じています。また、特に非公開会社では、大株主による専横という問題が従前から存在しており、“株主の誠実義務”は、古くて新しい論点といえます。この点、アメリカやドイツでは、この論点について古くから議論されていますので、実務的な観点のみならず、アカデミックな観点からも、比較法の手法で研究すると面白いだろうと考えました。日本にいながら海外の文献調査をするのは難しいですが、幸い当大学院には海外文献も調べられるデータベースシステムが導入されていますので、非常に助かりました。

授業やゼミでのディスカッションは弁護士に必要な頭脳の鍛錬に

どのような法的問題にも、明快な答えはありません。弁護士は、関連する法律をどのように“調理”すれば、クライアントの味方につけることができるかを、常に考えています。授業やゼミでのディスカッションにおいて、複層的な観点から1つの問題を検討し、深堀りするという経験は、このような法律の“調理”をする際に必要となる頭脳の鍛錬に、大変役立っていると感じました。

モチベーションを高める貴重な時間

国際的な視点を持つ先生方や同級生と共に学ぶことで、もっと上を目指したいというモチベーションも上がります。私の場合は、さらに深く探求してみたいという気持ちが強くなり、当大学院を修了後、メルボルン大学大学院(LLMコース)へ留学することを決めました。当大学院で学んだ経験がなければ、このようなキャリアパスは思いつかなかっただろうと思います。国際的な業務の幅を広げたいという希望も膨らんで、英語のみならず、中国語やフランス語などの語学力にも磨きをかけているところです。

若手弁護士が経験不足をカバーする一番の方法は勉強

私のような若手の弁護士にとって、経験不足は変えがたい事実ですが、クライアントにベストプラクティスを提供したいという熱意は、ベテランの弁護士と同じはずです。そこで、そのような経験不足をカバーするにはやはり勉強が一番であり、大学院修学はとても良い選択肢のひとつだと思います。海外ではリカレント教育が盛んな国も多く、弁護士を含めて多くの方が大学院等で学び直しをしながら、自分の業務の幅を広げているようです。日本でもそういった傾向は強くなりつつありますので、大学院で学びながら自分の強みと言える分野を作ることは大事だと思います。

ゴールに辿り着けば必ず身につくものがある(志望・検討されている皆さまへ)

当大学院は社会人向けの大学院ですので、アカデミックな研究ができるというのみならず、実務上の即戦力を養うという意味においても非常に有意義だと思います。修了した暁にはご自身の身に付いた“何か”が必ずあるはずです。仕事や家庭の両立にはいろいろ工夫が必要となるかもしれませんが、最後までゴールを目指してぜひ頑張っていただきたいと思います。