専攻について
3つのポリシー
ディプロマ・ポリシー
一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻は、豊かな教養と市民的公共性を備えた、構想力ある専門人、理性ある革新者、指導力ある政治経済人を育成するとの理念に基づいて、ビジネスローの分野において国際的な視野と戦略的思考能力を身に付け、幅広い分野において活躍することのできる法曹・法務人材の養成を目指します。
このような教育目標に基づき、本専攻は、修士課程及び博士後期課程のそれぞれにおいて、1.に掲げる能力及び資質等を修得していることを2.で示す方法で確認し、修了の認定を行い、修士(経営法)又は博士(経営法)の学位を授与します。
1.修得する能力・資質等
(1)修士課程
修士課程では、ビジネス上の複雑な法的課題やグローバルな経済環境で新たに生じる問題にも解決の道筋を見出せる法曹・法務人材を育成することを教育目標としています。このような教育目標に基づいて、次に掲げる目標を達成した学生に、修士(経営法)の学位を授与します。
①ビジネスローに関する幅広く深い学識を有していること。
②国際的な視野を有していること。
③知識を実践に生かす応用的な研究能力を有していること。
(2)博士後期課程
博士後期課程では、実務における経験から得た着想を学術理論に結びつけ、従来の研究者養成型の博士論文とは異なる新しいタイプの論文を完成させることで、ビジネスロー研究の多様化という観点から学問的に貢献できる人材を育成することを教育目標としています。実務での議論をリードするのみならず、実務と理論を結び付ける存在として、大学における法務教育の担い手となることも期待しています。このような教育目標に基づいて、次に掲げる目標を達成した学生に、博士(経営法)の学位を授与します。
④ 実務においてそのテーマの第一人者として認められる深い学識を有していること。
⑤ ビジネスローに関する理論を実務に生かし又は新しい理論的成果を生み出す研究能力を有していること。
2.修得した能力・資質等の判定方法
(1)修士課程
修士課程では、次の要件に備えた者に対して修了認定を行います。
(a)上記①及び②に係る能力を確認するための要件として、所定の修業年限以上在学し、所定の単位を修得していること。
(b)上記③に係る能力を確認するための要件として、必要な研究指導を受けた上、本研究科が行う修士論文又はリサーチペーパーの審査及び最終試験に合格すること。
(2)博士後期課程
博士後期課程では、次の要件を備えた者に対して修了認定を行います。
(a)上記④に係る能力を確認するための要件として、所定の修業年限以上在学し、所定の単位を修得していること。
(b)上記⑤に係る能力を確認するための要件として、必要な研究指導を受けた上、本研究科が行う博士論文の審査及び最終試験に合格すること。
カリキュラム・ポリシー
一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻は、豊かな教養と市民的公共性を備えた、構想力ある専門人、理性ある革新者、指導力ある政治経済人を育成するとの理念に基づいて、以下のとおり教育課程編成の考え方に基づく、学修内容及び学修方法、学修成果の到達目標、学修成果の評価方法により教育課程を実施します。
1.教育課程編成の考え方
(1)修士課程
修士課程では、まず、①ビジネスローに関する幅広く深い知識、②国際的な視野、③知識を実践に生かす戦略的・応用的な研究能力を修得するため、2.に記載のように体系性と先端性の両立を目指したカリキュラムを提供しています。修士論文については、「演習」において指導教員によるきめ細かな指導が行われます。加えて、2年次には「ビジネスロー総合」問題における中間報告会にて研究計画を報告することが義務づけられており、論文の構想や進捗状況を改めて確認する機会となります。
次に、特定分野での専門性を高めるため、「知財戦略プログラム」、「情報法プログラム」、「グローバル・ビジネスロー・プログラム(GBLプログラム)」を設置しています。その修了者には、プログラム修了証(サーティフィケート)が授与されます。
知財戦略プログラムは、知的財産法に重点を置き、知的財産法の科目を集中的に学ぶものです。知財戦略科目群の履修および知財戦略ゼミでの研究指導により、知的財産に関する制度・政策、先端的な実務を学ぶことで、知財戦略に精通した法曹・法務人材を育成します。
情報法プログラムは、デジタル社会に不可欠な情報法の科目を集中的に学ぶものです。情報法科目群の履修、情報法ゼミでの研究指導により、情報法分野の実務知識(個人情報・プライバシー等)、先端的課題(データ活用、AI等)への対応力を身に付けます。
GBLプログラムは、「世界で活躍できるグローバル法曹・法務⼈材」を育成するプログラムです。英語科⽬の受講、英語によるリサーチペーパーの作成、海外提携校への留学⽀援等を通じて、⾼度に先端的・専⾨的な英語運⽤能⼒の獲得を促します。
(2)博士後期課程
博士後期課程では、学生が実務における経験から得た着想を学術理論に結びつけ、従来の研究者養成型の博士論文とは異なる新しいタイプの論文を完成させることにより、①実務においてそのテーマの第一人者として認められる知識の修得、及び②ビジネスローに関する理論を実務に生かし、又は新しい理論的成果を生み出す研究能力の修得を教育目標としています。
この目標を踏まえ、博士後期課程では、実務経験又は実務的な問題関心を研究論文に結び付けるため、「演習」を中心とした、指導教員によるきめ細かな指導が行われます。加えて、原則として2年次に専攻教員全員の出席する中間報告会において研究計画を報告することが義務づけられており、論文の構想や学術的意義を専門分野(指導教員)以外の教員にも説明することが必要になります。自らの論文構想を改めて見つめ直すとともに、広い視野にわたるアドバイスを受けることができます。
博士論文執筆には幅広い知識が必要ですから、研究テーマや学生のバックグラウンド等を踏まえ、指導教員の助言に基づいた授業科目の履修が望ましい場合もあります。
また、GBLプログラムに関連する科目の履修を推奨し、世界で通用する知識・能力を涵養することも期待されます。
(3)研究倫理教育
研究活動上の不正行為を防止するため、全学生を対象として、研究倫理教育を実施します。
2.学修内容及び学修方法
第1に、多様なバックグラウンドを持った学生が参加することを踏まえ、各学生の知識・ニーズに応じた教育目標を達成するために、各法分野の基礎を体系的にカバーする「基本科目」と、分野横断的・応用的な性格を有する「発展科目」を提供しています。基本科目では、体系的な理論・知識の修得に重点を置いた教育が行われます。これに対して、発展科目では知識の実践・応用に重点を置き、ケーススタディやグループ・ディスカッションといった教育方法が多く用いられます。
基本科目の履修によりビジネスローに関する基礎的な理論の修得を目指すとともに、発展科目の履修によって、ビジネスローに関する最先端の知識の修得とその実践を意識した学修を行います。発展科目には、ビジネス法務の最前線で活躍する実務家による実践的な科目が数多く含まれています。
こうした科目配置を前提に、指導教員の助言に基づいた履修計画によって、各学生の専門性を拡張し、かつ段階的に理解を深める履修プログラムの構築が可能となっています。例えば、それまで携わった業務経験と疎遠な法分野については、1年次に基本科目、2年次に発展科目といった履修計画により段階的な理解を促し、すでに十分な知識を有する法分野については、1年次に発展科目を受講するといった形で、各学生のバックグラウンドに応じた、ビジネスローに関する幅広く深い知識の涵養を目指すとともに、その実践を意識した取組み(ケーススタディやグループ・ディスカッション)にチャレンジすることになります。
また、経営管理研究科金融戦略・経営財務プログラムの講義科目やイノベーション研究センターの講義科目の一部を履修することができます。金融や経営実務のほか、イノベーションのマネジメントに関する知識や理論の修得によって、ビジネスローの知識・理論をより幅広く活用する力にもなります。
第2に、研究指導にあたっては、研究者教員のみならず、実務経験の豊富な実務家(弁護士など)が特任教員として指導にあたり、理論と実践を架橋する研究への取組みをサポートします。例えば、修士課程1年次の必修科目である「ビジネスロー総合問題」において、研究計画のプレゼンテーションに基づくディスカッションが行われますが、専門の異なる複数の専任教員が参加するため、理論と実践の両面から助言・指導が実施されます。
また、論文執筆にあたっては、在学期間を通じて研究テーマに適合した教員の演習に所属し、当該教員(指導教員)から専門的な見地に基づくきめ細かな指導を受けるとともに、専門を同じくするゼミの学生同士で切磋琢磨して学びを深めることになります。
なお、研究活動上の不正行為を防止するため、全学生を対象として、研究倫理教育を実施します。
3.学修成果の到達目標
ビジネスローの分野においては、社会のグローバル化・法化が急速に進み、企業活動・取引に伴う法的問題の解決にあたって、国際的な視野と高度なビジネスロー運用能力が必要とされています。現代社会で活躍する法曹・法務人材には、こうしたグローバル・ビジネスローの発展に精通し、新たに生起する法的課題に対応する戦略的思考能力が求められています。そのため、本専攻での学修を通じ、ビジネスローの分野において国際的な視野と戦略的思考能力を身に付け、幅広い分野において活躍できる法曹・法務人材となることが、本専攻での到達目標です。
4.学修成果の評価方法
講義科目については、論述式の筆記試験やレポート等により、シラバスで示された授業の目標への到達度を判定することで、成績の評価を行います。なお、発展科目や一部の基本科目においては、報告やディスカッションといった貢献が特に考慮されます。
演習科目については、各自の担当する報告の内容や、ディスカッションにおける貢献の度合いにより、シラバスに示された授業の到達目標への到達度を判定することで、成績評価を行います。なお、博士後期課程では、中間報告会において、①研究テーマ・問題設定の妥当性、②研究方法の妥当性、③研究のオリジナリティ、④学術上・実務上の貢献等といった観点から、研究計画について評価を行います。
授業の到達目標への到達度は可能な限り複数の評価手段によって判定します。
修士論文及び博士論文の審査は、次の方法により行われます。まず、修士論文については、ビジネスローに関する理論と実践の架橋や新しい理論的な研究を目指したものであることが要求されます。リサーチペーパーについては、現実的な課題の分析、実践的な解決策の提示に重点を置いていることが求められます。そして、博士論文については、ビジネスロー専攻の博士後期課程での研究に基づき、ビジネスローに関する理論と実務の架橋を実現するような論文や新しい理論的な進展をもたらす論文であり、博士(経営法)にふさわしい学術的な価値を有するものであることが求められます。なお、修士論文及び博士論文にかかる論文評価基準及び論文審査方法の詳細は別に定めます。
本専攻は、成績評価の適切性・厳格性を確保するため、全学的に定められている成績評価基準に準拠して成績評価を実施すると共に、学生に成績説明請求を認めることで、成績評価に対する透明性と公平性を確保しています。
5.カリキュラムの改善
本専攻は以上のカリキュラム・ポリシーに基づき、学生の能力をよりよく伸ばすことを目指して、ファカルティ・ディベロップメント(FD)を行っています。また、外部の実務家や弁護士等からなるアドバイザリー・ボードを設置し、その評価や意見交換を基にしたカリキュラムの点検・評価を定期的に行うこととしています。
こうした活動を通じて、ビジネス環境の変化に対応し、ビジネスロー専攻の教育目的に合致するように、常にカリキュラムの改善に努めていきます。
アドミッション・ポリシー
一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻では、豊かな教養と市民的公共性を備えた、構想力ある専門人、理性ある革新者、指導力ある政治経済人を育成するとの理念に基づいて、以下のとおり入学者選抜を実施します。
1.求める学生像
一橋大学は、新しい問題領域の解明に積極的に取り組み、広く経済社会に貢献する人材を育成してきました。ここにおいて本専攻は、国際的な視野を備え、かつ高度なビジネスロー運用能力を備えた法曹・法務人材の育成を担っています。
法学は、法の適用と論理による問題解決を目指す学問ですから、論理的な思考力に基づき、精確なロジックを構築する能力が必要不可欠です。そして、ビジネスローに携わる法曹・法務人材は、新たなビジネスの発展に伴う諸課題を解決し、その展開を支援する役割を担っています。そのため、ビジネスローの修得にあたっては、新たなビジネスモデルや技術発展に興味を持ち、積極的に課題に取り組む主体的な態度が前提となります。さらに、企業活動と取引がグローバル化する現代において、国際的な視野を備え、英語によるコミュニケーション能力を高めることも重要になってきています。
また、本専攻は、社会人に対して実践的・先端的なリカレント教育を行い、高度な専門知識と能力を備えた法曹・法務人材を育成することを使命としています。
こうした人材を世に送り出すため、本専攻は次のような資質や知識、能力を持つ、多様な人材を受け入れたいと考えています。
①論理的な思考力・表現力を有していること。
②ビジネス上の課題を具体化・言語化し、法的に分析する能力を備えていること。
③企業、法律事務所、特許事務所などにおいて企業法務、知的財産業務及びそれらの関連業務に従事した経験を有していること、又は法科大学院を修了していること。
博士後期課程では、上記のものに加え、博士論文の完成させるために必要な次の能力・資質等を備えた学生を受入れたいと考えています。
④博士論文作成に必要な基本的能力を有すること。
⑤実務における経験から得た着想を学術理論に結びつける構想力を有すること。
また、本専攻で英語による教育を希望する場合には、修士課程、博士後期課程ともに、
⑥英語による意見発表・議論ができる能力を有していること。
が併せて求められます。
2.入学者選抜の基本方針及び多面的・総合的な評価方法
上記の能力を備えた学生を選抜するため、本専攻では、以下のとおり入学者選抜を実施します。
修士課程においては、①及び②に係る能力を評価するため、実践的な問題意識に基づいた研究計画書、③に係る経験を評価するため、それまでの実務経験等を記載した志願理由書の提出を求め、書類審査による第1次試験を行います。その後、第1次試験(書類審査)に合格した者を対象に第2次試験(口述試験)を実施し、①及び②に係る能力と、③に係る経験について評価を行います。
博士後期課程においては、研究計画書及び志望理由書に加えて過去に執筆した修士論文等の論文の提出を求め、書類審査及び論文審査による第1次試験を行います。その後、第1次試験に合格した者を対象に第2次試験(口述試験)を実施し、④及び⑤に係る能力・資質等を重点的に評価します。
英語による教育を希望する場合には、⑥に係る能力を評価するため、英語で作成された研究計画書の提出を求めるとともに、口述試験を英語により実施します。