専門性という武器を得て法務部門の存在価値をアップ

木下 和明さん

国際企業戦略研究科経営法務専攻博士課程 2022年 修了
現 法学研究科ビジネスロー専攻

[略歴] 法学部を卒業後、日本電気株式会社(NEC)に入社。国内外のサプライヤーからのソフトウェア調達等に関する企画、契約交渉等の実務に携わった後、2001年に法務部に異動。この間、国内販売会社に出向し、法務部の立ち上げに従事。国際企業戦略研究科経営法務専攻(現 法学研究科ビジネスロー専攻)修士課程を修了した後、博士課程に進み、2022年に博士号取得。

経営をサポートできる専門性を手に入れようと入学を決断

電機メーカーに入社して資材調達等の業務に携わった後、法務部に異動しました。世の中が不景気になると、法務部を含むスタッフ部門はコスト削減の圧力を受けやすくなります。私は、法務部門そして法務部門員は、経営者(の判断)や事業戦略をサポートし、一緒に汗水流して利益を生み出す部門、人材にならなければならないが、その武器となるのはまさしく専門性だと考えるようになりました。そんな折り、偶然参加した一橋大学のイベントで弁護士を含む先生方の講義を聞きました。話は新鮮で面白く、当大学院で法律面からの専門性、“ビジネスロー”を修得すれば、法務部門の存在価値は高まると思いました。自らの専門性を使って経営にダイナミックに関与する楽しさを実感したくて大学院への入学を決断しました。

書き上げた修士論文の内容はしっかり現場にフィードバック

修士論文では、「海外子会社のガバナンスと親会社取締役の法的責任に関する考察」について執筆しました。様々な実務を経験し、色々なことに興味がありすぎたので、テーマを確定させるのに大変時間がかかりました。また、実務家だからといってビジネスの実務ばかり書いても学位論文としては認められないとのアドバイスを受け、書き始めるギリギリまで悩みました。でも振り返ると苦労しながら思考をめぐらせて執筆する過程は充実していたし、達成感がありました。実際に書いた内容は現場にフィードバックし、活用できていますから得たものは大きいです。その後博士課程に進んだ理由は、その達成感に味をしめ、ここで止めるのはもったいないと思ってしまったからです。博士論文の執筆は、修論とは格段に苦労のレベルが違いましたが、先生の愛のムチを受けながらも食らいついていきました。私は一学生でありながら、指導教官の先生をはじめとする他大学の先生方の共同研究に入れていただいていたので途中で投げ出すわけにもいかなかったという事情もありました。恥ずかしながら、こんなに勉強したのは人生初であり、半端なく達成感がありました。

会社のフレックスタイム制度も活用しながら勉強を継続

仕事と勉強の両立に関しては、平日は管理職として夜遅くまで仕事をしなければならない場合も多く、土曜日と日曜日、祝日といった休日を集中して勉強する時間に当てていました。それ以外では、幸いなことに会社にフレックスタイム制度があったのでそれを活用することもありました。だからと言って決して四六時中、机に向かっていたわけではありません。サックスの演奏が好きで、レッスンに行く時間を作ることは諦めませんでした。気分転換は大事だと思います。

利害関係者を人として見ながら個々のインセンティブを理解する大切さ

企業を取り巻くステークホルダーには株主、銀行、経営者、従業員、協力会社などいろいろいますが、その構成員は、皆それぞれが一人の“人”です。詰まるところ人がどういう気持ちでどんなインセンティブを持って関わり、意思決定をするのか、そこを理解しないとビジネスはうまく展開しません。このことが、私が大学院で学んだ一番の肝です。法律に則ってさえすれば済む話ではない。なぜその法律が必要だったか、それらが作られた背景にある事実や考え方を踏まえた上で、それらが適用されるガバナンスの仕組みを考えたり契約条件を作成したりしないと、まとまる話もまとまりません。私には専門性の高い人財を育てる責任があるので、チームメンバーの方々にも当大学院で受けた教育の肝をしっかり伝えることを意識しています。

豪華な教授陣が勢ぞろいする環境で学ぶことの素晴らしさ

問題意識を持って本質を徹底的に追求、研究しようとする人にとって、当大学院ほど素晴らしい環境はないと思います。多くの豪華な教授陣と出会えますし、それぞれの先生方が本気で、かつ親身になってとことん指導してくださいます。それだけに厳しくはありますが、是非、腹をくくって挑んでみてください。新たな世界の扉が開かれるはずです。