令和元年司法試験の結果を受けて

令和元年司法試験の結果を受けて

 令和元年司法試験の合格者発表が9月10日にありました。
 本年度の司法試験受験者数は,全国で4,466名であり,昨年より772名減少しました。
 全体の合格者数は1,502名であり,昨年の1,525名より23名減少しています。
 受験者に対する合格率は33.6%(小数第2位で四捨五入,以下同じ)で,昨年(29.1%)よりも4.5%上昇しました。また、法科大学院修了者の合格率も、29.1%と、昨年(24.7%)より上昇しています。
 全体の合格率が上昇したことは評価したいと思います。しかし,依然として法科大学院修了生については30%に満たない合格率となっていることは,残念といわざるをえません。予備試験合格の資格での受験による合格者が昨年の336名から315名へと減少していますが、法科大学院修了生の合格者数も,昨年の1,189名から1,187名へと減少しており,法科大学院教育に従事する者としてはなお憂慮すべき事態が続いています。合格率がこの水準で推移するなら,法科大学院生の関心が過剰に司法試験対策に向けられることになり,学生が,未来の法曹として本来修得すべきことを修得できなくなることが懸念されます。善処策が講じられることを引き続き強く希望します。

 

 一橋大学法科大学院の修了生は,出願者117名,受験者112名,短答式合格者95名,最終合格者67名(既修者52名,未修者15名)という成績でした。受験者に対する合格者の割合は59.8%(既修者74.3%,未修者35.7%)です。昨年は59.5%(既修者76.6%,未修者29.5%)でしたから,全体に合格率が約0.3ポイント上がりました。
 直近(平成31年3月)の一橋大学法科大学院修了者についてみると,既修者については,受験者56人に対し合格者42人(合格率75%),未修者については,受験者20名に対し合格者8名(同40%)でした。全体の直近合格率は66%と、高い水準にあります。

 
 以上のとおり,一橋大学法科大学院の修了生は,本年度の司法試験においても大いに健闘しました。修了生のみなさんの努力の賜物であると思います。

 

 合格された方には,心よりお祝いを申し上げますとともに,今後のご活躍を願っております。そして,様々な分野におけるみなさんの今後の活動によって,一橋大学法科大学院の社会的評価が一層高められることを期待しております。

 

 今回は不本意な結果に終わった方には,一橋大学法科大学院が,修了生に対してもさまざまな形で支援を行っており,今後もこれを続けることを申し上げます。一橋大学法科大学院を修了した以上,法曹となるべき力が備わっていることは間違いありません。困ったことがあれば,一人で抱え込まず,どうか遠慮なくご相談ください。

 

 この機会に,直接・間接に学生を支援してくださった関係のみなさまにも厚くお礼を申し上げます。

 

 法科大学院を中心とする法曹養成制度については,今まさに大きな制度改変の渦中にあります。そのような状況下にあっても,一橋大学法科大学院は,時代の要請に柔軟に対応しつつ,今後も変わらず良き法律家の養成に努力を重ねて参る所存でございます。今後とも,一橋大学法科大学院の活動に,ご理解・ご支援を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。

 

                       2019年9月11日

                         一橋大学法科大学院長 山本和彦