法科大学院長からの挨拶

 

 商法講習所を起源とする一橋大学は、創立150周年を迎えました。一橋大学は、実学と国際性を重視する伝統と自由でリベラルな学風のもと、実業界を中心に有為の人材を多数輩出し、社会経済の発展に寄与してきました。

 2004年に創設された一橋大学法科大学院も、一橋大学の伝統と学風を踏まえ、ビジネス法務に精通し、広い国際的視野をもち、人権感覚に富んだ法曹を養成することを理念として掲げてきました。それを象徴しているのは、ビジネスロー・コースです。このコースでは、企業法務の最先端で活躍する弁護士の先生方が授業を担当しており、最新の実務の一端に触れることができます。その他にも、海外の法律事務所を含む国内外の様々な機関で実施されるエクスターンシップや、係属中の憲法事件を扱う人権クリニックなど、学生の様々な問題関心に応え、修了後の多様なキャリア形成に資するプログラムが用意されています。さらに、特定のテーマについて少人数で研究を深めていく「発展ゼミ」や、教員の指導のもとで研究論文の執筆を行う「法学研究」など、学生の主体的な学びを支援する体制も整えられています。

 本法科大学院は、その高い司法試験合格率で注目を集めることが多いかもしれません。しかし、本法科大学院は、創設以来一貫して、司法試験の合格という短期的な目標の達成に終始することなく、合格後を見据えて、社会の様々な分野で指導的な役割を担う、高い志をもった法曹を養成することを目標としてきました。法科大学院創設から20年が経過し、本学の修了生は、ビジネス法務や刑事弁護の分野の弁護士、裁判官や検察官、国際機関や官庁・企業内の法律専門家、法学研究者などとして、様々な分野で目覚ましい活躍を見せるようになっています。その活躍ぶりを目にすると、当初から掲げてきた理念・目標が実を結んでいることを実感します。

 法学部に法曹コースが設置され、2023年から司法試験の在学中受験が可能になるなど、近年、法曹養成制度は大きな転換点を迎えました。制度は変わっても、当初の理念・目標を変えることなく、よりよい社会の実現のために、次世代を担う指導的な法曹の養成に取り組んでいきたいと考えています。

 高い志をもった皆さんの入学をお待ちしています。

一橋大学法科大学院長

玉井 利幸