平成27年司法試験の結果を受けて

平成27年司法試験の結果を受けて

 平成27年司法試験の合格者発表が9月8日にありました。

 

 本年度の司法試験受験者は全体で8,016名であり,昨年より1人増加しました。

 

 全体の合格者数は1,850名で,昨年の1,810名より40名増加しています。受験者に対する合格率は23.1%(小数第2位で四捨五入,以下同じ)ですが,昨年は22.6パーセントでしたから,昨年度よりはやや増加しました。

 

 予備試験合格者は,301名が受験し186名が合格したので合格率は61.8%で,法科大学院中第1位の(一橋大学法科大学院の)合格率55.6%をやや上回っていますが,昨年よりは5パーセント程下がっています。

 

 一橋大学法科大学院の(今年の)修了生は,出願者151名,受験者142名,短答式合格者114名,最終合格者79名(既修者58名,未修者21名)という成績でした。受験者に対する合格者の割合は55.6%(既修者63.0.%,未修者42.0%)ですが,昨年は47.1%(既修者57.6%,未修者25.0%)でしたから,既修者,未修者ともに昨年より大きく上がっています。なお,直近の平成26年度修了者についてみると,既修者については,受験者56人に対し合格者43人(合格率76.8%),未修者については,受験者24名に対し合格者13名(同54.2%)でした。

 

 一橋大学法科大学院の修了生は,本年度の司法試験でも健闘し,対受験者合格率では,総合及び未修者については全法科大学院中で第1位の成績となりました。修了生諸君の努力に対し,一橋大学法科大学院の教職員を代表して,敬意を表します。

 

 まず,合格されたみなさんには,日々のみなさんのたゆまぬ努力が実を結んだことに心からお祝いを申し上げます。ただ,みなさんはまだ法律家として出発点に立っただけであることも忘れないで下さい。今一度,法律家の役割と責任とは何か,そして自分たちはいったい何のために法律家になるのか,法律家になって何を実現しようとするのかを問い直し,決意を新たにして法律家としての長い道を歩んでほしいと思います。一橋大学法科大学院でみなさんが学んだことは,むしろ,これから役に立つでしょう。みなさんが,今後,社会の各分野において,法に関係する指導的役割を担うことのできる法律家になられることを心より願っております。

 

 次に,残念ながら今回は不本意な結果に終わった方々にも,もう一度,法律家を志した初心を振り返ってほしいと思います。なぜ法律家を目指すのか,法律家になって何を実現しようとしたのかを思い出して,今後のことを考えてください。みなさんのこれまでの努力は,決して無駄ではありません。一橋大学法科大学院は,修了生についてもさまざまな形の支援を行ってきましたし,今後も支援を続けます。何かあったときは,一人で抱え込まないで,遠慮なくわたしたちにご相談下さい。わたしたちが,常にみなさんの傍にいることを忘れないでほしいと思います。

 

 最後に,直接・間接に学生を支援してくださった関係者の方々にも厚くお礼を申し上げます。みなさんの厚いご支援のおかげで今回の結果を得ることができました。本当にありがとうございます。

 

 現在,法科大学院を中心とする法曹養成制度のあり方については批判も多く,さまざまな形での見直しが検討されております。一橋大学法科大学院も種々の努力を重ねており,例えば,昨年の文科省の加算プログラムでは未修者教育の充実等で高い評価を得ることができ,また,共通到達度試験の試行などの改革にも取り組んでいます。今回の司法試験の結果は,みなさんのご支援の賜物であると伴に,このような努力の結果でもあると自負しています。しかし,まだまだ直すべき点も多いかと思います。これからも,一橋大学法科大学院は,チャレンジする法科大学院として,教育方法などについて改善を重ねながら,善き法律家の養成になお一層精進してまいります。今後とも,広く,みなさまのご理解,ご協力をいただければ,幸いに存じます。

 

2015年9月9日

 

一橋大学法科大学院長 滝沢昌彦