平成26年司法試験の結果を受けて

平成26年司法試験の結果を受けて

 平成26年司法試験の合格者発表が9月9日にありました。

 

 本年度の司法試験受験者は全体で8,015名で,昨年より362人増加していますが,これは受験回数の制限の緩和によるものだと考えられます。

 

 全体の合格者数も本年度は1,810名で,昨年の2,049名より239名減少しています。受験者に対する合格率は22.6%(小数第2位で四捨五入,以下同)で,昨年は26.8パーセントでしたから4%も減少しており,特に新司法試験制度が始まった平成18年以降で最低であったことは大変残念です。

 

 予備試験合格者は,244名が受験し163名が合格しており,合格率は66.8%で,法科大学院中合格率1位の京都大学法科大学院の合格率53.1%を大きく上回っていますが,昨年よりは5パーセント程下がっています。

 

 一橋大学法科大学院修了生は,出願者140名,受験者136名,短答式合格者110名,最終合格者64名(既修者53名,未修者11名)という成績でした。受験者に対する合格者の割合は,47.1%(既修者57.6.%,未修者25.0%)で,昨年は54.5%(既修者60.5%,未修者40.5%)でしたから,昨年よりは既修者,未修者ともに下がっています。なお,直近の平成25年度修了者についてみると,既修者については,受験者59人に対し合格者39人(合格率66.1%),未修者については,受験者21名に対し合格者7名(同33.3%)でした。

 

 一橋大学法科大学院の修了生は,本年度の司法試験でも健闘し,対受験者合格率では,総合では全法科大学院中で,京都大学法科大学院,東京大学法科大学院に次いで第3位の成績となりました。

 

 修了生諸君の努力に対し,一橋大学法科大学院の教職員を代表して,何よりもまず敬意を表したいと思います。

 

 まず,合格されたみなさんには,日々のみなさんのたゆまぬ努力が実を結んだことに心からお祝いを申し上げたいと思います。ただ,みなさんはまだ法律家として出発点に立っただけであることも忘れないでほしいと思います。法律家は権力を持つことになります。誤った形で権力を行使してはなりません。今一度,法律家の役割と責任とは何か,そして自分たちはいったい何のために法律家になるのか,法律家になって何を実現しようとするのかということを問い直し,決意を新たにして法律家としてのこれからの長い道を歩んでほしいと思います。みなさんが,今後,社会の各分野において,法に関係する指導的役割を担うことのできる公共的志操の高い法律家になられることを心より願っております。

 

 次に,残念ながら今回不本意な結果に終わった方々にも,もう一度法律家を志した初心を振り返ってほしいと思います。なぜ法律家を目指すのか,法律家になって何を実現しようとしたのかを思い出して,今後のことを考えてください。みなさんがこれまで努力したことは決して無駄ではありません。一橋大学法科大学院は,修了生について,さまざまな形の支援を行ってきましたし,今後も支援を行っていく予定です。何かあれば,一人で抱え込まないで,遠慮なくわたしたちにご相談下さい。わたしたちはみなさんに対する支援を可能限り行っていきます。わたしたちが常に傍にいることを忘れないでほしいと思います。

 

 最後に,直接・間接に学生を支援してくださった関係者の方々にもお礼を申し上げたいと思います。みなさんの厚いご支援のおかげで今回の結果を得ることができました。本当にありがとうございます。昨年の司法試験の結果を受けて法科大学院長の下にWGを設置し,司法試験の結果を分析し,それを受けて進級試験を復活させたり,基礎を確認しながら授業を行うという申しあわせを教授会で行いました。今回の司法試験の結果についても分析し,必要な改善策を積極的に考えていくつもりです。

 

 また,現在,法科大学院を中心とする法曹養成制度のあり方については批判を受けてさまざまな形での見直しが検討されております。現在のあり方にさまざまな課題があることは事実ですが,一橋大学法科大学院は,チャレンジする法科大学院として,教育方法などについて改善を重ねながら今後も善き法律家の養成になお一層精進してまいりたいと存じます。今後も,広く,みなさまのご理解,ご協力をいただければ,幸いに存じます。

 

2014年9月9日
一橋大学法科大学院長 阪口正二郎