令和5年司法試験の結果を受けて

令和5年司法試験の結果を受けて

 

 令和5年司法試験の合格者発表が11月8日にありました。

 

 本年の司法試験受験者数は,全国で3,928 名であり,昨年より846名増加しました。全体の合格者数は1,781名であり,昨年の1,403名より378名増加しています。受験者に対する合格率は45.3%(小数第2位で四捨五入,以下同じ)で,昨年(45.5%)よりも0.2%下落しました。他方,法科大学院修了生・在学生を併せた合格率は40.7%でしたが,法科大学院修了生の合格率は32.6%と,昨年(37.7%)より5.1%下落しています。本年から新たに受験資格を得た法科大学院在学生の合格率は59.5%でした。
 制度の移行期にあり,受験者数が増加する中で,昨年より合格者数が増加し,全体の合格率がほぼ昨年並みであったことは評価したいと思います。また,法科大学院在学生の合格率がまずまずの水準であったこと,予備試験合格の資格での受験による合格者が昨年の395名から327名へと減少したことについても,法曹養成の中心を法科大学院教育へと移行させる改革が順調に滑り出したものとして積極的に評価することが可能です。他方で,法科大学院修了生の合格者数が昨年の1,008名から817名へと減少し,合格率も下落したことには留意しなければなりません。法科大学院は,法曹コース出身者を始めとする優秀な人材を早期に法曹として輩出するという役割だけでなく,未修者を中心とした多様な人材を優れた法曹へと養成するという社会的使命をも担っています。合格率がこの水準で推移し,在学中合格者が偏重されることになれば,法科大学院生の関心が過剰に司法試験対策に向けられることになり,学生が,未来の法曹として本来修得すべきことを修得できなくなることが懸念されます。善処策が講じられることを引き続き希望します。

 

 一橋大学法科大学院修了生・在学生は,出願者188名(修了者111名,在学生77名),受験者180名(修了者108名,在学生72名),短答式合格者160名(修了生95名,在学生65名),最終合格者121名(修了生61名〔うち既修者56名,未修者5名〕,在学生60名〔うち既修者54名,未修者6名〕)という成績でした。受験者に対する合格者の割合は67.2%(既修者74.8%,未修者33.3%、修了生56.5%、在学生83.3%)です。昨年度の割合60.0%(既修者70.4%,未修者31.0%)との対比では,既修者については4.4%,未修者については2.3%上昇しました。
 なお直近(令和5年3月)の一橋大学法科大学院修了生についてみると,既修者については,受験者67名に対し合格者50名(合格率74.6%),未修者については,受験者4名に対し合格者1名(同25.0%)でした。全体の直近合格率は71.8%と,依然として高い水準にあります。

 

 以上のとおり,一橋大学法科大学院修了生・在学生は,本年度の司法試験においても大いに健闘し,対受験者合格率では,全法科大学院中第2位(在学生については、合格者1名の大学院を除けば第1位)の成績となりました。修了生及び在学生のみなさんの努力の賜物であると思います。

 合格された方には,コロナ禍を乗り越えて,大きな成果を挙げられたことについて,心よりお祝いを申し上げますとともに,今後のご活躍を願っております。そして,様々な分野におけるみなさんの今後の活動によって,一橋大学法科大学院の社会的評価が一層高められることを期待しています。

 今回は不本意な結果に終わった方には,一橋大学法科大学院が,修了生に対してさまざまな形で行ってきた支援を今後とも続けることをお約束します。一橋大学法科大学院を修了した以上,法曹となるべき力が備わっていることは間違いありません。困ったことがあれば,一人で抱え込まず,どうか遠慮なくご相談ください。

 また,この機会に,直接・間接に学生を支援してくださった関係のみなさまにも厚くお礼を申し上げます。

 法科大学院を中心とする法曹養成制度については,大きな制度改変を経て、新たな時代に突入しました。そのような状況下にあっても,一橋大学法科大学院は,時代の要請に柔軟に対応しつつ,今後も変わらず良き法律家の養成に努力を重ねて参る所存でございます。今後とも,一橋大学法科大学院の活動に,ご理解・ご支援を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。

 

2023年11月9日

一橋大学法科大学院長 本庄武