令和4年司法試験の結果を受けて

令和4年司法試験の合格者発表が9月6日にありました。

 

　本年の司法試験受験者数は，全国で3,082 名であり，昨年より342名減少しました。全体の合格者数は1,403名であり，昨年の1,421名より18名減少しています。受験者に対する合格率は45.5%(小数第2位で四捨五入，以下同じ)で，昨年（41.5%）よりも4.0%上昇しました。また、法科大学院修了者の合格率も、37.7％と、昨年（34.6％）より3.1％上昇しています。

　全体の合格率と法科大学院修了生の合格率がともに上昇したことは評価したいと思います。しかし、予備試験合格の資格での受験による合格者が昨年の374名から395名へと増加する一方、法科大学院修了生の合格者数は，昨年の1,047名から1,008名へと減少しています。法科大学院教育に従事する者としてはなお憂慮すべき事態が改善されているとはいえません。合格率がこの水準で推移するなら，法科大学院生の関心が過剰に司法試験対策に向けられることになり，学生が，未来の法曹として本来修得すべきことを修得できなくなることが懸念されます。善処策が講じられることを引き続き強く希望します。

 

　一橋大学法科大学院の修了生は，出願者116名，受験者110名，短答式合格者84名，最終合格者66名（既修者57名，未修者9名）という成績でした。受験者に対する合格者の割合は60.0%（既修者70.4%，未修者31.0%）です。昨年度の割合58.2%（既修者65.4%，未修者40.6%）との対比では、既修者については5.0％上昇し、未修者については9.6％下降し、全体で1.8 %上昇しました。

　なお、直近（令和4年3月）の一橋大学法科大学院修了者についてみると，既修者については，受験者57人に対し合格者47人（合格率82.5.％），未修者については，受験者12名に対し合格者4名(同33.3％)でした。全体の直近合格率は73.9％と、依然として高い水準にあります。

 

　以上のとおり，一橋大学法科大学院の修了生は，本年度の司法試験においても大いに健闘し、対受験者合格率では、全法科大学院中第3位の成績となりました。修了生のみなさんの努力の賜物であると思います。

 

　合格された方には，コロナ禍がなお継続する状況の中にもかかわらず、大きな成果を挙げられたことについて、心よりお祝いを申し上げますとともに，今後のご活躍を願っております。そして，様々な分野におけるみなさんの今後の活動によって，一橋大学法科大学院の社会的評価が一層高められることを期待しています。

 

　今回は不本意な結果に終わった方には，一橋大学法科大学院が，修了生に対してもさまざまな形で支援を行っており，今後もこれを続けることをお約束します。一橋大学法科大学院を修了した以上，法曹となるべき力が備わっていることは間違いありません。困ったことがあれば，一人で抱え込まず，どうか遠慮なくご相談ください。

 

　また、この機会に，直接・間接に学生を支援してくださった関係のみなさまにも厚くお礼を申し上げます。

 

　法科大学院を中心とする法曹養成制度については，今なお大きな制度改変の渦中にあります。そのような状況下にあっても，一橋大学法科大学院は，時代の要請に柔軟に対応しつつ，今後も変わらず良き法律家の養成に努力を重ねて参る所存でございます。今後とも，一橋大学法科大学院の活動に，ご理解・ご支援を賜りますよう，よろしくお願い申し上げます。

 

2022年9月7日

 

一橋大学法科大学院長　石田剛