令和2年司法試験の結果を受けて

令和2年司法試験の結果を受けて

 令和2年度司法試験の合格者発表が1月20日にありました。

 本年度の司法試験受験者数は,全国で3,703名であり,昨年より763名減少しました。
 全体の合格者数は1,450名であり,昨年の1,502名より52名減少しています。
 受験者に対する合格率は39.2%(小数第2位で四捨五入,以下同じ)で,昨年(33.6%)よりも5.6%上昇しました。また、法科大学院修了者の合格率も、32.7%と、昨年(29.1%)より上昇しています。
 全体の合格率が上昇したことは評価したいと思います。しかし,依然として法科大学院修了生については30%強の合格率にとどまっていることは,残念といわざるをえません。また、予備試験合格の資格での受験による合格者が昨年の315名から378名へと増加していますが、法科大学院修了生の合格者数は,昨年の1,187名から1,072名へと大幅に減少しており,法科大学院教育に従事する者としてはなお憂慮すべき事態が続いています。合格率がこの水準で推移するなら,法科大学院生の関心が過剰に司法試験対策に向けられることになり,学生が,未来の法曹として本来修得すべきことを修得できなくなることが懸念されます。善処策が講じられることを引き続き強く希望します。

 

 一橋大学法科大学院の修了生は,出願者126名,受験者119名,短答式合格者105名,最終合格者84名(既修者67名,未修者17名)という成績でした。受験者に対する合格者の割合は70.6%(既修者80.7%,未修者47.2%)です。昨年は59.8%(既修者74.3%,未修者35.7%)でしたから,全体に合格率が10ポイント以上、上がりました。
 直近(令和2年3月)の一橋大学法科大学院修了者についてみると,既修者については,受験者68人に対し合格者55人(合格率80.9%),未修者については,受験者19名に対し合格者10名(同52.6%)でした。全体の直近合格率は74.7%と、高い水準にあります。

 
 以上のとおり,一橋大学法科大学院の修了生は,本年度の司法試験においても大いに健闘しました。修了生のみなさんの努力の賜物であると思います。

 

 合格された方には,コロナ禍という中、また司法試験日程も変更になるという困難な状況の中にもかかわらず、大きな成果を挙げられたことについて、心よりお祝いを申し上げますとともに,今後のご活躍を願っております。そして,様々な分野におけるみなさんの今後の活動によって,一橋大学法科大学院の社会的評価が一層高められることを期待しています。

 

 今回は不本意な結果に終わった方には,一橋大学法科大学院が,修了生に対してもさまざまな形で支援を行っており,今後もこれを続けることをお約束します。一橋大学法科大学院を修了した以上,法曹となるべき力が備わっていることは間違いありません。困ったことがあれば,一人で抱え込まず,どうか遠慮なくご相談ください。

 

 また、この機会に,直接・間接に学生を支援してくださった関係のみなさまにも厚くお礼を申し上げます。

 

 法科大学院を中心とする法曹養成制度については,今まさに大きな制度改変の渦中にあります。そのような状況下にあっても,一橋大学法科大学院は,時代の要請に柔軟に対応しつつ,今後も変わらず良き法律家の養成に努力を重ねて参る所存でございます。今後とも,一橋大学法科大学院の活動に,ご理解・ご支援を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。

 

2021年1月21日

一橋大学法科大学院長 山本和彦