平成30年司法試験の結果を受けて

平成30年司法試験の結果を受けて 

 平成30年司法試験の合格者発表が9月11日にありました。
 本年度の司法試験受験者数は,全国で5,238名であり,昨年より729名減少しました。
 全体の合格者数は1,525名であり,昨年の1,543名より18名減少しています。
 受験者に対する合格率は29.1%(小数第2位で四捨五入,以下同じ)で,昨年(25.9%)よりも3.2%上昇しました。
 全体の合格率が上昇したことは評価したいと思います。しかし,30%に満たない合格率となっていることは,残念といわざるをえません。法科大学院修了生の合格者数は,昨年の1,253名から1,189名へと減少しており,予備試験合格の資格での受験による合格者が昨年の290名から336名へと増加していることは、法科大学院教育に従事する者としては憂慮すべき事態です。法科大学院修了生全体の合格率は,24.7%です。合格率がこの水準で推移するなら,法科大学院生の関心が過剰に司法試験対策に向けられることになり,学生が,未来の法曹として本来修得すべきことを修得できなくなることが懸念されます。善処策が講じられることを強く希望します。

 

 一橋大学法科大学院の修了生は,出願者129名,受験者121名,短答式合格者105名,最終合格者72名(既修者59名,未修者13名)という成績でした。受験者に対する合格者の割合は59.5%(既修者76.6%,未修者29.5%)です。昨年は49.6%(既修者65%,未修者19.5%)でしたから,全体に合格率が約10%上がりました。
 直近(平成30年3月)の一橋大学法科大学院修了者についてみると,既修者については,受験者57人に対し合格者48人(合格率84.2%),未修者については,受験者17名に対し合格者5名(同29.4%)でした。

 

 以上のとおり,一橋大学法科大学院の修了生は,本年度の司法試験においても大いに健闘しました。修了生のみなさんの努力の賜物であると思います。

 

 合格された方には,心よりお祝いを申し上げますとともに,今後のご活躍を願っております。そして,みなさんの今後の活動によって,一橋大学法科大学院の社会的評価が一層高められることを期待しております。

 

 今回は不本意な結果に終わった方には,一橋大学法科大学院が,修了生に対してもさまざまな形で支援を行っており,今後もこれを続けることを申し上げます。一橋大学法科大学院を修了した以上,法曹となるべき力が備わっていることは間違いありません。困ったことがあれば,一人で抱え込まず,どうか遠慮なくご相談ください。

 

 この機会に,直接・間接に学生を支援してくださった関係のみなさまにも厚くお礼を申し上げます。

 

 法科大学院を中心とする法曹養成制度については,駆け足で制度改変が行われる可能性が高まっています。そのような状況下にあっても,一橋大学法科大学院は,時代の要請に柔軟に対応しつつ,今後も良き法律家の養成に努力を重ねて参る所存でございます。今後とも,一橋大学法科大学院の活動に,ご理解・ご支援を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。

 

                       2018年9月12日
一橋大学法科大学院長 小粥太郎