プロジェクト期間: 2007年4月1日~2009年3月31日
「契約」は法の中心概念であり、近代以降は、私人間の取引のみならず国家をはじめとする共同体や組織を成り立たせる基盤として
我々の社会生活の重要な礎となっている。
そうした中、グローバル化に伴い、人や物、情報の交流・流通が飛躍的に増大している現代の国際社会においては、
地域や国家の枠を超えた人びとの交流・取引の支柱として契約の意義はますます大きくなると同時に、
文化や慣行の相違などに応じて人びとの「契約」への意識や捉え方も多様化している。
その意味で、従来型の西洋近代の枠を超えて、よりグローバルで多元的な観点から「契約」の意義や機能を見直し、
人類社会全体を見据えた「契約」理論を提示することは21世紀の法学・社会科学が担う一大課題と言える。
そうした状況を踏まえて、近代法学的な視点にとどまらず、より多角的・学際的観点から「契約」を根源的に検討し直し、 それを通じて現代の国家や共同体、経済取引、法的・政治的紛争などに関連する問題解決への貢献をすることが本プロジェクトの目的である。
本プロジェクトで特に重視したいのは、既存の学問領域の枠を超えた「多角」性、「学際」性である。 民事法や経済法など単独の領域での契約研究はこれまでに数多くあるが、「契約」をより根源的に捉え直すという上述の趣旨を踏まえ、 ここでは、歴史学、文化論、哲学、経済学、さらには生物学や心理学、認知科学などの研究背景を持つ複数の研究者の共同研究により、 人文・社会・自然科学全般にまたがる複合領域的視点に立った「契約」研究を行う。 従来の法学での解釈学的な「契約」論にとどまらず、 異なる学問領域からの多角的な「契約」研究を行うことで「そもそも契約とはいかなるもので、 どういう意義を持ち、今後の人類社会でいかなる機能を担うか」を根源的な視点で見直し、 新しい理論や観点を提示するところに本プロジェクトの目的がある。 こうした「複合領域」での取り組みにより、目先の問題対応ではなく、 根源的・基礎的研究を通じた社会問題解決、政治・経済活動や社会共同体のあり方への考察を行う、 厚みのある研究を提示するのがここでの意図である。
多元的・根源的な「契約」研究という趣旨を踏まえ、以下のような成果を期待している。
本プロジェクトは、2002年4月1日~2007年3月31日をプロジェクト期間として実施された、 一橋大学国際共同研究センター第5プロジェクト「―契約の比較法文化史的研究―」を 内容的に引き継ぐものである。