時代の根本を探ることで法的なリテラシーを高める

教養ゼミ 屋敷二郎教授

 町田実秀先生が一橋大学で初めて法制史の講座を開講したのは、1932年のことでした。以来、一橋大学では、80年にわたって西洋法制史の伝統が受け継がてきました。
 西洋法制史の課題は、日本が受け入れた西洋の近代法をより深く理解するために、それが拠って立つ法文化的基盤を歴史的に探求することです。自分にとって関心のある素材の変遷をその枠内で考えていきます。ある時代の法律像を明らかにしようと研究する人もいれば、歴史の転換点となった一人の法学者に的を絞って研究する人もいます。
 今年の教養ゼミでは、Harold J. Bermanの『Law and Revolution』をテキストにしています。これは、これまで断片的に論じられていた800年前の一連の出来事を「教皇革命」として包括的に論じ、フランス革命に勝るとも劣らない大革命だったと評価したスケールの大きな学術書で、非常に刺激的な内容です。ゼミでは、テキストの内容の部分は自習でクリアしてきて、自分が関心を持ったところから課題を立てて、皆で議論します。あるときは日本の同時代である鎌倉・室町時代の法制史研究者が来てくれて、議論が広がりました。場をつくれば、活発な議論が始まります。知識は陳腐化しますが、知恵は長持ちします。時代を超えて根本にあるものを学ぶことでリテラシーが高まるのです。学部や学年を問わず参加でき、決まったカリキュラムに縛られない教養ゼミは、そのような学びの場として最適です。(談)

 

 

HQ vol.33より転載