刑事弁護人の役割と倫理
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一橋大学
大学院法学研究科
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研究課題名 「刑事弁護人の役割と倫理」

 

平成19年度実績報告

  1.  平成19年度は、研究分担者による個別報告のほかに、志布志事件に焦点をあてて、(1)捜査機関による組織的な接見交通権侵害という特異な事例の下で、弁護人固有の権利論を展開することの功罪、(2)冤罪を知った検察官の訴訟継続をめぐる検察官倫理という二大テーマにつき、全国研究会及び総括シンポジウムで討議した。その結果、(1)につき、本件の具体的状況の下での戦略論としては支持できるが、一般論として接見交通権を弁護人の固有権と主張することは、刑事弁護人の役割を被疑者・被告人の自己防御権に奉仕する代理人ではなく、むしろ弁護人の公的機関性を強調することにつながる懸念があること、(2)につき、志布志事件に関する検察庁及び警察庁の各報告書の分析の結果、捜査機関には虚偽自白を誘発する代用監獄の危険性に対する問題意識が欠落しており、「適正捜査の励行」というスローガンの確認に終わっていること、及び、志布志事件において、担当検察官が公訴官としての立場を忘れ、悪しき当事者主義の考え方を徹底して実践していることの背景には、アメリカ合衆国とは異なり我が国に検察官の行為を規律する倫理規範が欠如していることを確認した。
  2.  総括的な研究成果として、「法曹倫理」といっても法曹三者の役割論と密接に結びついており、特に刑事弁護人の場合には、その代理人的性格を重視するか司法機関的性格を重視するかによって倫理問題へのアプローチに違いが生ずること、実態として、刑事弁護人の役割は単一ではなく場面に応じて多面的な役割を担うことから倫理問題への対応も一義的に定まるのではなく、当該場面に即した役割に従って倫理問題の解消が図られるべきことが明らかになった。
一橋大学 大学院法学研究科