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大学院法学研究科法学部

一橋大学法学研究科法科大学院

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法曹養成制度検討会議「中間的取りまとめ」に対する意見

2013年5月1日

法曹養成制度検討会議「中間的取りまとめ」に対する意見

一橋大学法科大学院

第1 基本的な考え方

 「取りまとめ」が法科大学院を中核とする「プロセスとしての法曹養成」の理念を堅持する方針を示したのは、優れた見識である。法科大学院制度ができたことによって、法曹志望者は、単なる受験のための知識を超えて法律学を体系的かつ本格的に学ぶようになった。我々が接する法科大学院生のほとんどは、優れた法曹となって社会に貢献することを目指して、真摯に学習に取り組んでいる。修了生たちは、すでにさまざまな分野で法律家として活躍している。また、法科大学院制度によって、法曹志望者は、司法試験受験以前から、法を実際にどのように使うかという観点を強く意識して学習するようになった。教える側の我々にとっても、法科大学院制度は、これまで分断されていた研究・教育と実務との間の連携を格段に強化する効果をもたらしている。これは、今後の司法の運営および法律学の発展のために大きな意味がある。
 他方で、平均的な司法試験合格率の低さ、とくに未修入学者の司法試験合格率の低さ、法科大学院への入学出願者の減少など、法曹養成の過程に大きな問題が生じているのも確かである。一橋大学法科大学院は、これまで相対的には優れた実績を残しているものの、本校においても教育の方法などについて、さらなる改善のための努力が必要であると自覚している。

第2 法曹の職域と法曹人口について

 企業法務や公務員のような新しい法曹の職域は、ようやく広がりを見せつつある。法科大学院生が描く自らの将来像も、多様な進路を目指すように変わりつつある。これは、司法試験の合格者を増やしたからこそ実現した変化である。いま合格者を減らしたら、このような発展の芽も枯れてしまうであろう。ただちに3,000人合格は無理としても、司法試験合格者を増やすという方針は、維持するべきである。また、現在、司法試験合格のために要求するべき能力の絶対的な水準について、明確な共通認識はできていない。その中で司法試験の合否判定をするためには、合格者数の目標値が必要である。そこで、たとえば当面2,100名程度の合格者数を目途とし、それを徐々に増やしていくといった具体的な数値目標を設定することが必要である。
 「取りまとめ」が法曹有資格者の活用を促進する方策を提案しているのは、適切である。法曹の多様な職域への進出を促すための方策として、たとえば、弁護士法5条2号による弁護士資格取得の途をさらに広げることを検討するべきである。現行制度では、司法試験合格後、7年間一定の法律職を務めて研修を修了することが条件となっている。この7年間をたとえば3年間に短縮することが考えられる。そうすれば、司法試験合格後直ちに企業、官庁、地方自治体などに就職して、働きながら弁護士資格を得る者が増えるであろう。それによって、法曹の職域拡大が促進され、また法曹を目指す者の経済的負担を減らす効果もある。

第3 法曹養成課程における経済的支援について

 法科大学院生に対しては、日本学生支援機構による奨学金を中心に、従前に比べてより幅広い経済的支援が行われている。しかし、それでも経済的な困難が法科大学院進学を妨げている例がある。能力と意欲のある者が、経済力に拘わらず法科大学院に進学できるように、無利子奨学金の枠をさらに広げる、返還免除の可能性をさらに広げるなどの施策を採るべきである。

第4 未修者教育について

 未修者については、その選抜方法と教育方法をさらに改善することが必要である。本校は、未修者教育においても、比較的優れた実績を残している。その原因の1つに、未修1年次の学習内容を法律基本5科目に限定するという本校の履修課程があると考えられる。この点は、法科大学院全体の参考となるであろう。
「取りまとめ」は、共通到達度確認試験および客観的で厳格な到達度判定の仕組みを提案している。この種の制度が定着して信頼性が高まったときには、それを司法試験の短答式試験の代わりとする構想も検討に値する。

第5 司法試験について

 現在の司法試験は、純粋な未修者が3年間に学習できる知識の量に比べて、過大な要求をしている。そのために制度全体の整合性が損なわれている。司法試験が要求する知識の量をより限定するべきである。
 「取りまとめ」は、司法試験改善策の一案として、選択科目の廃止を挙げている。しかし、応用力に富み、専門性の高い法曹を育てるためには、法科大学院では、法律基本科目以外にも視野を広げて学習することが重要である。したがって、仮に司法試験の選択科目を廃止するとしても、法科大学院においては、展開・先端科目の履修は必須とすべきである。他方、予備試験の内容を法科大学院修了と同程度とするためには、予備試験において選択科目の受験を必要とするべきである。
 「取りまとめ」は司法試験受験回数を5回まで増やすという案を挙げている。それは、いわゆる受け控えを減らすためには有効であろう。しかし、5年間に5回の受験を許した場合には、単年度の受験者が増えることにより、単年度合格率は下がるであろう。そのため、従来と同じ数の者が合格に至るまでにより長い年数を要することになるから、実際には受験者の利益にはならない。受け控えを減らすためには、一律に5回の受験を認めるよりも、たとえば3回目の受験で不合格となったものの比較的高い順位の成績を挙げた者(惜敗者)に限って、5年の期間内にさらに追加的な受験を認めるといった仕組みの方が合理的である。

第6 予備試験について

 予備試験制度は、本来、経済的な事情によって法科大学院で学ぶことができない者や社会経験の豊富な者に司法試験受験機会を保障することを目的としている。しかし、現実の予備試験制度は、そのような者ではなく、むしろ法学部あるいは法科大学院在学の者のための短縮経路として働いている。それが、法科大学院生に対しても悪い影響を及ぼしている。その害は、たとえば司法試験科目以外の科目を学習する熱意が低下する、法科大学院在学中に予備試験に合格したために、法科大学院での地道な学習を疎かにして、司法試験の受験準備に熱中するといった形で現れている。
 このような弊害を防ぐために、予備試験はその本来の目的にかなった運用をするべきである。また、経済的困難が法科大学院入学を妨げる者については、上述のように、奨学金のいっそうの充実によって対処するのが、もっとも重要な対策である。「取りまとめ」が、予備試験の運用改善策を先送りにしていることを我々は憂慮する。

第7 継続教育と法科大学院の役割について

 「取りまとめ」は、法科大学院が法曹の継続教育のために一定の役割を果たすことを期待している。本校も、弁護士倫理研修その他法曹の継続教育のために貢献したいと考えている。